小屋と離れの設計

ー新たなライフスタイルの開拓ー 入居者像を探る

設計図…それは、工事の行く宛を示す地図のようなものです。
これがなければ、工事を始めることができません。

まだ見ぬ未知の領域、新生活を形にする作業。
言ってみれば、設計とは開拓に近いものかもしれません。
とても長い道のりです。

設計図を描くために重要なものは、、、

何よりもまず、クライアント様との対話(通称:ヒアリング)が必要になります。
普段、クライアント様はどのようなスタイルで過ごされているのか?
そして、この機会に、どのように生活を改善させたいのか?

クライアント様自身が把握していないような何気ない希望まで、対話を通じて汲み取ってゆきます。
この汲み取った情報が、クライアント様の欲しい空間を形づくる基礎となります。

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今回は賃貸物件です。
入居するお客様を我々が想定しなければなりません。
では、どのようなお客様が入居するのでしょうか?

その手がかりとして、まず注目したのが、吉祥寺が「若者が住みたい街1位」にランクインするような街であるということでした。
この情報から、今回の賃貸住宅の住人となるのは30代ぐらいの若者であると最初に辺りをつけました。
さらに今回の物件の既存の間取りが5Kであることも考えると、家族構成として若夫婦+子ども1~2人が想定されます。

  • 次に注目したのが、家賃相場のデータでした。
    吉祥寺の家賃相場は、一軒屋(3LDK相当)だと、およそ15万円です。
    月々15万円の家賃を支払うとなると、ご夫婦の職業も限られてきます。
  • 例えば、広告制作。雑誌・新聞などに載せる宣伝、パンフレット、ポスターなどを制作している人。
    例えば、ITエンジニア。ゲームソフト、ロボットシステム、各種スマホアプリなどを開発している人。
    例えば、外資系。生命保険や証券、歩合制の実力勝負の仕事をしている人。

などなど…

列挙した職業に共通しているのは、
・拘束される時間が長く、特殊なスキルが必要とされること
・勤務地としては、東京23区内の可能性が高いこと

このことから、ご夫婦の仕事に対する姿勢は、かなりストイックなことが伺えます。
しかし、23区内で仕事をしているにも関わらず、なぜ23区外の吉祥寺に住みたいのでしょうか?

吉祥寺には、
・新しい商業施設が立ち並びつつも、すぐそばには懐かしさを感じるハモニカ横丁などの名所がある。
・賑わう駅前エリアとは対極的な自然あふれる井の頭公園が近くにある。
・個性的な雑貨屋やカフェなどオシャレな店が多い。

こうしてみると、吉祥寺はリフレッシュできる時間がある街と言えるかもしれません。

忙しい共働きの夫婦が、仕事とプライベートの時間をハッキリ分けるために選ぶ住まい。
忙しい共働きの夫婦が、子どもとの時間を大切にするために選ぶ住まい。
忙しい共働きの夫婦が、リフレッシュできる時間を作るために選ぶ住まい。
家族像を想定していくことで、こんな感じで住まいの輪郭が見えてきます。
こうして見えてきた輪郭をさらに鮮明にするために、もう一つ重要な作業があります。
それはまた次回のお話。開拓の道のりはまだ長い。

 

 

ー新たなライフスタイルの開拓ー 既存住居を調査する

設計図を描くために重要なものがもう一つ、、、

それは、敷地調査。
計画敷地にかかる法的制限やその場所ならではの魅力を洗い出さなくてはなりません。
それは負の条件を逆手に取り、正の条件を最大限に生かすことに繋がります。

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…しかし、今回はリノベーション工事。
既存の構造体の中に新しい空間を造ることになるため、
図面を描く前に、敷地ではなく、建っている物件の寸法を計測する作業(通称:現調)が必要になります。

私たちが現調に赴いたのは、昨年末のことでした。

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ここで活躍するのがレーザー計測器。
本体からレーザーを照射した物体までの距離をボタンひとつで測ることができるスグレモノです
この機械を使用すれば、30坪弱の住宅の場合、30分程度で現調終了となります。

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現調結果のファイルを正書すれば、既存図の完成です。_46_wp
さて、早々と終わった現調ですが、時間がかかるのはココから。
想定した家族像から明らかになってきた住まいの輪郭を、この物件に落とし込んでいきます。

広い屋上庭園に桜の借景、旗竿の奥まった敷地、閉塞感の強い1階と開放的な2階…

「屋上で採った野菜をそのまま料理して食べられる。」
「通勤は自転車で。カッコよく飾って片付ける。」
「広い玄関土間は、アウトドアの強い味方。」

力強い物件の個性と住まいの輪郭がリンクし、様々な生活シーンが頭の中に沸き起こります。
ここで出た様々な生活シーンをまとめるために、次は指針となるコンセプトを作らなくてはなりません。
それもまた次回のお話し。開拓の道のりは、まだまだ長い。